壬生倉医師インタビュー
治療を行うため、
患者様との会話を重視した診察を
心がけています
医師を目指したきっかけ
高校時代は長距離選手として部活動に励み、いつかは箱根駅伝の選手になるということを夢見ていました。本格的な受験勉強が始まると、部活動に加えて塾にも行くようになり、遅い時間に帰宅するという生活に変わりました。
この頃、ちょうど私が家に帰るタイミングで、仕事に出掛ける父とすれ違うことが頻繁にありました。当時、循環器の医師だった父は、ほぼ毎日夜遅くに往診に出かけており、真夜中に帰宅するといった生活を続けていましたが、朝9時には診察室に入って患者様と向かい合っていました。
受験勉強をしている傍らで懸命に働いている父を見ていくうちに、自分も同じように人を助ける仕事に就きたいと強く思うようになり、医師を目指すことになりました。
医学の道に進んだ後、私が選択したのはERでした。研修中、さまざまな診療科で実習をしましたが、中でも緊急時に先の先を読んで治療を行い、瞬間瞬間でジャッジを下していくERの先生の姿を見て、自分もこのようになりたいと思ったのがきっかけです。
ERの仕事は、先の先を読む力、先手を打つ力、そして状況に応じた状況判断力が求められる、まさに長距離走のような仕事だと私は思います。常に相手と駆け引きを行い、相手の顔色を伺いながら走り続けなければならないという意味では、長距離走が好きな自分の性格に最も合っている診療科であると思っています。
ERではどのような診療をしていますか
突発的な病気や交通事故などによる怪我、その他の症状により、救急車で搬送されてきた患者様の初期診療に当たるのが我々ERの仕事となります。
救急隊から連絡が入ったとき、まずは患者様の置かれている状況や症状について細かく聞くようにしています。そのときの会話をもとに、患者様の症状を予測したうえで、処置の準備を進めていきます。
こうした状況においては、いつも時間が限られており、瞬時に適切な判断を下す必要があります。そのため、常に緊張感を持ちながら患者様を救うための処置に取り組んでいます。
また、搬送されてくる患者様の容体は一人ひとり異なるため、それぞれの症状に対処することができるよう日々勉強をし、アップグレードすることも怠らないようにしています。
なお、初期診療の後に専門の先生にバトンタッチをするまでがERの仕事であるため、患者様の受け渡しまでに漏れがなく、スムーズに移行できるよう心がけています。
これまでの患者様の中で印象に残った出来事について教えてください
あるとき、ぜんそく持ちの85歳の方が急性の呼吸不全肺水腫で搬送されてきました。すぐに気道挿管を行い、人工呼吸器の処置をしたものの、意識は戻らず、昏睡状態が続いていました。
なんとか意識を取り戻して欲しいと、毎日データを眺め、次に出てくる症状を先読みし、先手を打って処置を行い続けました。すると、2ヶ月後には自発呼吸ができるようになり、さらに喋ることができるまでに回復してくれました。
最終的には、約4ヶ月で退院することができ、自らの足で歩いて帰られたのですが、そのときは本当に嬉しく、この仕事をやっていて良かったと心から思いました。
患者さんと接する中でどのようなことを心がけていますか?
患者様が医師と話をするとき、おそらく我々の言葉は非常に重いものとして受け取られているのではないでしょうか。だからこそ、齟齬(そご)がないよう患者様との会話は丁寧に行い、また自ら発する言葉には責任を持って発言しなければならないと思っています。
一刻を争うERにいるときは、患者様の発する言葉に集中し、一言も聞き漏らさず、そのときの状態を的確に見抜くことに注力します。そして、正しい処置や診察を行えるよう努めています。
また、内科医として診察する場合には、問診を非常に重視しています。患者様の言葉の中にもしかすると大きな病気につながるようなヒントがあるかもしれないため、慌てずゆっくりと会話を行うことによって、その奥に潜むかもしれない病気を探り出すことを心がけています。
ホームページをご覧になる患者様へのメッセージ
病院に訪れる患者様の病気や不安を取り除くお手伝いをしたい、その一心で診療を行っています。そのため、医師として常に全力を尽くし、患者様に向き合うことをお約束します。
ところで、患者様の病気の状態を細かく見るため、場合によっては診療時間が長くなってしまい、お待たせすることもあるかもしれません。
しかし、全ての患者様の病気を見つけ出し、治療をするために必要な時間ですのでご了承いただければ幸いです。
プロフィールProfile
診療科 | 内科、ER |
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専門医・認定医等 | 日本救急医学会 |